2020年8月3日月曜日

知っていて損はないEMC/EMIシールディングについて


EMCシールディングとは?

EMC(電磁両立性)シールティングとは、外部の電磁信号から高感度信号を保護するため、または強い電磁信号が漏れて周囲の電子機器と干渉しないようにするための対策です。ICチップや電子稼働部品を含むPCB関連デバイス、またはPCB同士をつなげるためのコネクタやケーブルをカバーすることができます。

電磁波の周波数はさまざまな高感度電子機器に影響を与えます。通信回線のシンプルなノイズから、セーフティクリティカルな信号の完全な切断まで、あらゆる種類の問題を引き起こす可能性があります。そのため影響を与える分野も幅広く、消費者用から産業用までのすべての電子機器、また軍事用から救急までの重要システムも含みます。

それではEMCシールディングについての基礎知識を簡単にご紹介します。


EMCシールディングの方法

EMCシールディングの主な目的は、電磁妨害(EMI)または無線周波妨害(RFI)が高感度電子機器に影響を与えないようにすることです。その方法として、空気中を伝わってくる電磁波を吸収させる金属スクリーンを使用します。シールド効果はファラデーケージの原理に基づいており、金属スクリーンが高感度電子機器または電磁波を発する電子機器の周辺を完全に取り囲みます。スクリーンはこの電磁波を吸収し、スクリーン本体の中に電流を溜めます。そしてこの電流はアース接続または仮想グランドプレーンによって吸収されます。

このような電磁波が高感度な電気回路に届く前に吸収されてしまうため、保護された信号は電磁波妨害を受けることなく、シールディング効果が最大限に発揮されるというわけです。分かりやすい例の一つがスマートフォンです。スマートフォンの受信機が情報を受け、処理してスクリーンに表示するためのデバイス内の高感度電子機器をEMCシールディングで保護することは不可欠なのです。


EMCシールディングに使用可能な素材

EMCシールディングに使用できる技術や素材はいくつかあり、電子機器の種類や使用する周波数によって異なります。使用する素材、シールドする量、素材の厚さなどによって信号を低減させる、またはブロックする量が変わるためです。またこれらの要因は、シールディングによって吸収できる周波数の範囲や高さにも影響を及ぼします。

素材の一部を紹介します。

 機器の配線をシールドする場合は金属ホイルまたは編組ひもを利用します。

  • 同軸ケーブルにはこのEMCシールドを外側絶縁層の真下にある配線の中に埋め込みます。他のケーブルの束については、ホイルまたは工事全体に使用できる既製の編組ケーブルで巻き付けることができます。回線の端をつなげるコネクタも金属でカバーする必要があり、また全体を覆うためにこの金属に編組ケーブルまたはホイルを使用します。

  • PCB用のシールディング(「ボードレベルシールド」または「BLS」)の場合は通常、グランドプレーンを埋め込んだPCBとメタルボックス(シールド缶)を高感度デバイスまたは電磁波を発するデバイスに設置します。これですべての構成部品はファラデーケージの原理に基づいて完全に保護されます。
  • オーディオスピーカーのような機器については、金属の内部ケーシングを使用して周辺にある電磁波を発する機器(電子レンジやテレビなど)からのEMIをブロックします。

周波数範囲が100kHz未満の磁場では導電ペイントや磁性物質を使用することもできます。他にはシートメタル、金属発泡体、導電性プラスチック、金網スクリーンなどを使用する方法もあります。

周波数によって異なりますが、シールディングは必ずしも固体スクリーンでなければならないわけではなく、規則的に穴が並んでいるものや、針金で作られたフェンスの場合もあります。そのため重要なのは、電磁波周波数帯のどの部分を特定の用途において保護する必要があるのかを理解することです。


EMCシールディングの応用例

EMCシールディングはさまざまな用途に使用されますが、その例をいくつかご紹介します。

  • 医療装置や実験装置の保護
    信号干渉を中断させ防止することが極めて重要であり、人命救助につながる可能性があります。
    AM/FMの救急サービスやその他の遠隔通信、データ通信、手術室や病棟の患者をモニタリングする装置、さらにペースメーカーなどの体内に埋め込むデバイスなども含まれます。
  • RFIDチップやその他のデバイスに内蔵されるデータへのアクセス防止
  • エアギャップシステムとの併用で、軍事、政府、金融システムなどに使用している既存のセキュリティ対策を強化および補完

つまり、周辺の電磁場から隔離させる必要のある高感度電子機器や、歓迎されない余分な信号を発する機器にはシールディングが必要なのです。技術への依存度が高い現代においては、すべての電子機器にEMI/RFI対策は不可欠と言えるでしょう。

 

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EMC/EMIシールディングについて」(著者:Neil Moore)は、初めてharwin.comに掲載されたブログです。

 著者

Neil Moore

イギリスのブライトン大学にて電子工学を学んだ後、2005年よりPCB産業において自動車用、商用および消費者用電子機器のプロジェクトに携わる。

2019年、EMC製品および工業製品のプロダクトマネージャーとしてHarwinに入社。PCB製造業界で培った経験を活かし、回路基板の設計および生産技術に関する専門知識を顧客のプロジェクトに取り入れる。

趣味:アウトドアが大好きで湖水地方、サウスダウンズウェイ、スノードニアなど、多くのハイキングコースを制覇している。


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