2022年2月24日木曜日

【ニューテック・チューズデー】ケーブルはもうやめ!充電ならやっぱりワイヤレス

 

 

ニューテック・チューズデー

技術ジャーナリストのトミー・カミングスが毎週、設計エンジニアにとって興味ある「旬な」トピックを取り上げます。

 

世の中、何ごとも縛られるというのは愉快なことではありません。特に充電ケーブルには。

スマートフォンやデバイスをケーブルなしで充電できれば、どんなに楽なことでしょう。電気自動車やウェアラブルの普及が進む今日、誰もが充電ケーブルの束縛から解放されたいと願っているはずです。

ワイヤレス充電は、ケーブルやコードを使わずに電源から機器にエネルギーを伝送する技術ですその歴史は長く、1891年、発明家のニコラ・テスラが行ったワイヤレス給電の実証実験に遡ります。それから130年以上を経た今もなお、この技術は進化を続け開発者たちは、成長著しいワイヤレス充電市場に向けてソリューションを次々と打ち出しています。

 

ここで、ワイヤレス充電の利点について整理してみましょう。まず、ワイヤレス充電は、物理的なコネクタやケーブルが不要でありながら、信頼性が高く、便利で、安全性が実証された技術です。第二に、充電器のコイルと充電対象機器のコイルが近接し、互換性があり密結合されていれば、小型機器から産業用まで、機器の種類や大きさに関係なく、誘導電力伝送を連続して行うことができます。

また、ワイヤレス充電には難点もあります。磁界は空気中で急速に減衰するので、現在のスマートフォンのワイヤレス充電は、距離に制限があります。そこで磁気素材、コイル、チップ、保護回路をスマートフォンに搭載しようとすると、コストが高くなります。

今週の「ニューテック・チューズデー」は、Signal Transformer社、PANJIT Semiconductors社、STMicroelectronics社から、電力伝送ソリューションを実現する注目の新製品をご紹介します。



コイル、MOSFET、パワーIC

スマートフォンやタブレットの充電パッドは、今ではすっかり身近なアイテムになりました。充電パッドに内蔵されているワイヤレス充電コイルが、振動磁界を発生させ、その誘導でエネルギー源からデバイスへ信号、データ、電力を伝送します。 Signal Transformer/Belのワイヤレス充電コイルは、単巻、二巻、多巻の構成があり、送信側と受信側の間を橋渡しをします。この薄型のコイルは、スマートフォン、タブレット、ゲームコントローラ、ウェアラブル、歯ブラシ、ロボット掃除機、ドローン、さらにはスマートカー向け充電アプリケーションなどに最適です。もちろん、誘導結合により、導電接続や従来の配線は不要になります。コイルは固定位置で動かず、振動や腐食に強く、信頼性と長期寿命を実現します。

 

PANJIのワイヤレス充電トランスミッタ用パワーMOSFETは、充電ソースとバッテリ受電機器の間の電磁誘導に最適化されており、 ワイヤレス充電器の適切で効率的な動作を実現します。薄型パッケージは、省スペース化に貢献し、低スイッチング損失と高スイッチング周波数を実現します。このMOSFETは、低性能指数(FOM)を特徴とし、表面実装用の露出サーマルパッドを備えています。代表的な用途として、ワイヤレス充電パッドやケースが挙げられます。

 

また、ワイヤレスパワーソリューションには、パワーレシーバも必要ですSTMicroelectronicsSTWLC68 Qi準拠ワイヤレスパワーレシーバは、最大5Wの出力電力を管理できます。STWLC68は、受信コイルの交流電圧を出力で安定した直流電圧に整流します。32 ビットArm Cortex マイクロコントローラ(64MHz)は、電磁誘導性通信プロトコルとBPPBase Power Profile)についてQi 1.2.4 規格に準拠し、スマートフォン、パワーバンク、ウェアラブルなどの携帯機器に最適です。内蔵の低損失同期整流器と低ドロップアウト(LDO)リニアレギュレータにより優れた効率を発揮します。デジタルコアによって管理されるため、幅広い出力負荷状態でシステム全体の消費電力を最小化します。なお、Qi(チー)とは、標準化団体WPC(ワイヤレスパワーコンソーシアム)が策定したワイヤレス給電の国際標準規格です。

 

今週のまとめ

ワイヤレス充電技術は、急速に進化しており、今後も市場の大きな拡大が期待されています。デバイスの利便性が追求される限り、ワイヤレス充電の利便性も同じように求められるでしょう。やはり、この時代、何ごとも縛られたくない、誰もがそう思っているはずです。



著者

トニー・カミングス

米国テキサス州在住のフリーランスライター兼編集者。ジャーナリスト歴は40年以上におよび、 現在、Texas Monthly誌、Oklahoma Todayにて執筆中。過去Dallas Morning News紙、Fort Worth Star-Telegram紙、San Francisco Chronicle紙などでの執筆経験を持つ。シリコンバレーのドットコム・ブームを取材し、様々なメディアでデジタルコンテンツやオーディエンスエンゲージメント編集に携わる。2018年から2021年までマウザー・エレクトロニクスにてテクニカルコンテンツプロダクトコンテンツ・スペシャリストとして勤務。

 

 

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