2022年1月14日金曜日

【ニューテック・チューズデー】ドライバー監視システム向け開発ツールとプロセッサ特集

 

 

ニューテック・チューズデー

技術ジャーナリストのトミー・カミングスが毎週、設計エンジニア向けにホットなトピックを取り上げます

 

昔から、人の運転に口出ししたがる、いわゆる「バックシートドライバー」と呼ばれる輩(やから)には、うんざりします。あれこれ口うるさい上に、指示する道順も間違っていることがあり、かえって事故を招くことになりかねません。はなはだ迷惑な存在です。

ところが、ドライバー監視システムの登場により、運転手への忠告が大きな価値を持つようになりました。今日のバックシートドライバーは、運転手の目や耳や頭脳となり、より正確な情報を把握したスマートなパートナーとして、正しく道案内してくれます。なかなか頼もしい存在です。

ドライバー監視システムは、ADAS(先進運転支援システム)に含まれる機能の1つです。カメラ、センサ、プロセッサを組み込んだ車載モジュールが、ドライバーの注意力を高められるようデータとアルゴリズムを処理します。完全自動運転車の技術はまだ完成には至っておらず、開発検討が今も行われています。今後はさらに、UWB(超広帯域無線通信)、次世代無線通信規格Wi-Fi 65Gアクセスエッジ技術など、多くの技術の実装可能性も検証していかなければなりません。

ただし、このようなシステムが実用化されるためには、開発と処理機能の評価が不可欠です。

今週の「ニューテック・チューズデー」では、車載安全システムに理想的なBasler社とArduino社の開発ツール、 NXP Semiconductors社のプロセッサに注目したいと思います。

「見る」「聞く」「処理する」を評価する

コンピュータビジョン・アプリケーションには、当然のことながらテストが必須です。Basler NVIDIA社製Jetson Nano対応エンベデッドビジョンキットは、プラグアンドプレイの感覚で、コンピュータビジョンの迅速なプロトタイピングが可能になります。キットには、Sマウントレンズのdartカメラモジュール、NVIDIA Jetson Nano開発者用ボード、特別に設計されたアダプターボード、接続に必要なケーブル配線が付属しています。また、統合カメラドライバ、サンプルリファレンスアプリケーションが含まれており、開発者はNVIDIA Jetsonプラットフォームの機能を活用して、エッジAIのユースケースに向けてすぐに開発パッケージ使用できます。NVIDIA Jetsonシリーズは、クラウドネイティブに対応しているのも特長です。これによりメーカーや開発者は、製品の改良や、Jetson ベースのAIエッジデバイスの新機能追加が行えます。また、2種類のアドオンカメラキットもあり、Jetson Nanoプロセッサボードを既に使用している開発者は、対応する開発者ボードにビジョンを追加できます。

 

Arduino Portenta Vision Shieldは、 Arduino Portenta H7開発ボードのハードウェアアドオンです。 このアドオンによってエッジコンピューティングにビジョンと音声を追加することが可能になります。このデバイスは、高レベルなコードとリアルタイムタスクを同時に実行することができるので、常時オンのマシンビジョンや音声アプリケーションに最適です。シールドはイーサネットポートでも、長距離無線通信LoRAオンボード接続でも利用可能で、どちらもオンボードの Himax低消費電力カメラモジュール、マイク2つ、ローカルデータストレージ用のmicroSDカードスロットを使用します。また、超小型、無指向性音声センサによる音声認識、および音声イベント検出機能も備えています。

 

最後に、このシステムの最小にして頭脳に相当する部品を紹介します。NXP Semiconductors社製 i.MX 8Mアプリケーションプロセッサは、ストリーミング・オーディオ/ビデオ機器向けの最大4個の1.5GHz Arm® Cortex®-A53コアとCortex-M4コアを搭載しています。このクワッドプロセッサは、ストリーミングメディアと3Dグラフィックスの新要件に対応しています。i.MX 8Mフル4K ハイダイナミックレンジ (HDR)とプロ用オーディオの最高レベルの忠実度、最大20のオーディオ・チャネル、DSD512オーディオを提供。また、小型フォームファクタ(0.65mmピッチ)で柔軟なメモリオプションと高速接続を提供します。 なお、NXPeBook『スマートモビリティの未来を切り拓くテクノロジー』にて同社のスマートモビリティ技術について詳しく紹介しています

 

 

今週のまとめ

現在、物陰から現れる歩行者や対向車など、意識の範囲外の事象にもドライバーが気づけるようなドライバー監視システムの開発が行われています。完全自動運転車の開発が進められている今、その応用できる領域は日々広がっています。ただし、システムを実用化する前に、正しい開発ツールを利用してシステムの機能をしっかり確認しておくことが大切です。

 

 

著者

トニー・カミングス

米国テキサス州在住のフリーランスライター兼編集者。ジャーナリスト歴は40年以上におよび、 現在、Texas Monthly誌、Oklahoma Todayにて執筆中。過去Dallas Morning News紙、Fort Worth Star-Telegram紙、San Francisco Chronicle紙などでの執筆経験を持つ。シリコンバレーのドットコム・ブームを取材し、様々なメディアでデジタルコンテンツやオーディエンスエンゲージメント編集に携わる。2018年から2021年までマウザー・エレクトロニクスにてテクニカルコンテンツプロダクトコンテンツ・スペシャリストとして勤務。

 

 

 

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