ソフトウェア定義自動車(Software-Defined Vehicle)とは
主な機能や性能がソフトウェアによって実現された新しい自動車の概念を指します。自動車は今、ハードウェアに依存した実用的な交通手段から、ソフトウェア中心のユーザー体験へと進化しています。ソフトウェア定義自動車は、安全性、快適性、利便性などの機能面の強化はもちろん、ハードウェアに依存した従来の自動車にはない多くのメリットがあり、その性能も向上します。これからもソフトウェア定義自動車は、安全・セキュリティ機能をいっそう強化し、自律性の向上、機能・安全関連のソフトウェアの更新、インフォテインメントなどのコネクテッドサービス向けソフトウェアプラットフォームの実装を続けてゆくことでしょう。
ソフトウェア定義自動車の技術概要
自動車メーカーでは、主に以下の3つの領域でセンサの採用が増えています。
- 排出ガス
- オンロード性能
- 乗車体験
排出ガスの削減
オイル、冷却水、燃料の消費量測定をはじめ、米連邦政府による排出ガス規制が始まり、自動車メーカーは、燃焼性能が監視できるセンサ技術を刷新し、排出量の改善が求められました。そこで開発されたのが、エンジン性能を制御して、排出ガスを制限できるマニホールド絶対圧(MAP)センサです。MAPセンサは、マニホールド圧力を測定し、その数値からエンジン制御ユニットが空気密度と質量流量を算出します。これらのパラメーターを組み合わせることにより、燃料投入量を自動制御し、最大限の燃焼効果が発揮できるようになります。化学量論的燃焼にできるだけ近づけることで、燃焼反応の範囲が最大化され、有害な排ガスの原因となる望ましくない燃焼反応生成物の抑制が可能になります。
1960年代前半になるとさらに、全米初の自動車排出ガス規制が制定され、自動車メーカーは車載センサの計測感度・性能の向上を迫られました。このニーズに対応するために、メーカーが開発したのがMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)センサです。圧力測定によるエンジン制御を可能にするこの新しいセンサは、瞬く間に自動車全体に採用されるようになりました。MEMSセンサは、2つの点でエンジン制御に適しています。まず、機械的に計測されるパラメータに電子情報が入力されること、そして、自動車への実装面積が小さいという点です。この2つの要因の組み合わせることで、データの取り込みとソフトウェア制御のための経済的で高性能なソリューションが生まれました。エンジン性能の向上、排ガスの削減、安全性の向上、利便性の改善を実現するMEMSセンサを搭載した今日の自動車では、ソフトウェアによる燃焼とガスの最適化がますます重要になっています。
オンロード性能の向上(シャーシ)
パワートレイン性能の向上とともに、シャーシのオンロード性能を計測するセンサも進歩しました。このセンサは、自律走行に深く関連する機能に使用されています。その活用例には、自動ブレーキシステム(ABS)、ロードノイズ・キャンセリング、トラクションコントロール、自動駐車などがあります。またセンサは、横滑り防止装置のための振動データや、パンク防止に向けてタイヤの空気圧も計測します。収集されたデータにより、ソフトウェアは自動車の状態を調整して、ドライバーが何もしなくても、振動を低減し、タイヤの消耗に対応します。
基本的に、こうした機能は安全性を中心に活用されていますが、副次的なメリットとして、運転・乗車体験の向上があります。エンジニアはデータを活用して、より安定したフレームを設計したり、タイヤの距離と位置を最適化してバランスとサポートを強化したり、これまでの運転の癖から自動ブレーキシステムの性能を向上させて、停止時間を短縮させたりすることができます。
クルーズコントロールが道路の勾配やその他の走行条件の変化に適応してゆくように、ソフトウェア駆動型の走行は、運転性能を向上させることにより安全性を強化し、このアプローチのメリットを倍増させます。
乗車体験(車室内・外装)
センサ活用が進んでいる3番目の領域は、快適性、利便性、安全性が実感できる車室内と外装に関する乗車体験です。スマートフォンとコネクテッド技術の普及により、自動車のドライバーは、車内に搭載された接続インターフェイスやカスタマイズ可能なテクノロジーを利用するユーザーでもあります。自動車業界の最前線の安全技術とMEMSセンサ技術によって、フロントエアバッグとサイドエアバッグの展開パターンとタイミングは大きく改善されました。また、周囲光の変化に応じて、ヘッドライトを作動させるタイミングをより正確に予測できるようにもなりました。
快適性については、センサのデータから、座席温度や向きなどのドライバーの好みや設定を自動車に記憶させることができます。また、センサはナビゲーションを支援したり、ドライバーのユーザーインターフェイスの好みをソフトウェア制御の設定に反映させることも可能です。さらには、外部データが増えたことにより、ドライバーの疲労などの原因から車両がコースから外れている場合も、状況が中央処理装置に伝えられます。この機能は、運転操作の誤りを防ぎ、人的ミスを大幅に削減することによって、安全性を劇的に向上させます。
Amphenol ICC Minitek MicroSpace™ コネクタシステム
クルマをツールから体験に進化させるには、 Amphenol社の一部門であるAmphenol ICCのソリューションの活用の検討をおすすめします。同社は、情報通信、商用電子機器市場向けに相互接続ソリューションを提供する世界的リーダーです。Amphenol ICCは、サーバー、ストレージ、データセンター、ネットワーク、産業、ビジネス機器、車載など様々な用途に向けて、ケーブルアセンブリなどの革新的で幅広いコネクタの設計・製造を行っています。
ソフトウェア定義車には、多種多様な圧着電線コネクタプラットフォームが使用されています。小型サイズで、堅牢性と極めて高い汎用性を備えたプラットフォームが必要な場合は、Minitek MicroSpace™ コネクタシステムが理想的です。Amphenolは、米国自動車研究評議会(USCAR2)に準拠した先進的なコネクタを幅広く提供していますが、この製品もその1つです。Minitek Microspace™は、車載規格LV 214-4(欧州)Severity-2に適合し、車載用電気コネクタシステムの性能仕様を満たしており、 部品の小型化への高まるニーズに対応したコンパクト設計の圧着電線コネクタです。信号密度の向上により実装面積を50%削減できます。高振動耐久性、プライマリラッチ、TPA、CPA、ポカヨケ、こりじ防止などが柔軟な構成(千鳥配列、左右1列/2列、サイドラッチ/トップラッチ)で求められる場合に最適です。
まとめ
電気自動車が今後さらに普及すると、排出ガス、オンロード性能・運転体験、利便性、安全性などの向上に向け、ソフトウェア定義による機能がますます搭載されるようになります。設計者がローカルMCUやMPUを使用して膨大なセンサデータをリアルタイムで処理できるようになれば、既存のプロセスインフラを活用することにより、ソフトウェア定義車は今後、自律走行を推進する基盤となることでしょう。
著者
アダム・キンメル
約20年にわたりエンジニア、研究開発マネージャー、技術記事ライターとして活躍。執筆分野は、自動車、産業/製造、テクノロジー、エレクトロニクス市場に関するホワイトペーパー、ウェブサイト広告、ケーススタディ、ブログ記事などに及ぶ。キンメル氏は、化学工学・機械工学で学位を取得。現在、エンジニアリング・テクノロジー関連記事制作会社ASK Consulting Solutions, LLCの創立者兼代表
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