写真1:市営空港ではテスラ社のレベル2のEV充電器が設置されており、帰路用に充電中。下位レベルの充電装置では、2時間で約80マイル分の充電が可能(写真:著者撮影)
1804年から5年にかけてセントルイスから陸路で太平洋に達したアメリカ人の探検家ルイスとクラークが「走行距離不安症」を持っていたという話はないと思いますが、もしEVの充電器が整備されていない荒野でEVを走行させなければならなかったとしたら、さすがのルイスとクラークも不安になっていたでしょう。
まずは2019年型テスラモデル3を所有する私と妻のブリジットを紹介させてください。私たちは完全なテスラ信者であり、テスラ社CEOのイーロン・マスクの大ファンです。これに関しては異論もあるかもしれませんが、この車を所有してから9カ月、私たちの過度な期待にも応え、一切の不満もありません。
といっても、実は愛車テスラと実行した「最大の冒険」、フルチャージで362km(225マイル)走行できる50kWのバッテリー搭載EVで、往復853km(530マイル)という長距離の旅を乗り切りました。ルイスとクラークの探検とは比較になりませんが、それでも相当なチャレンジでした。
「走行距離不安症」については私もこれまで色々と耳にしていました。この冒険から体感したのは、EV充電器のインフラが需要に追い付いていない地域を走行しなければならないEVオーナーに直結している問題だということ ―ここがポイントです。
そういえばテキサス州内を往復483km(300マイル)走行したことがありますが、レベル3のテスラスーパーチャージャーステーションが行きにも帰りにもあったので楽勝でした。
都市部のテスラスーパーチャージャーステーションはオアシスです。オーナーたちが車を充電しながら、オーナー同士でコミュニケーションをとっている様子が伺えます。そうなれば皆さんもお分かりの通り、テスラオーナーは愛車を控えめに自慢してから、30分以内でフルチャージされた車で移動します。
しかしそんな彼らからも走行距離不安症のケースをいくつか聞いたことがあります。特定の充電ステーションに無事到着するために、大幅に計画を変更しなければならなかったということです。
確かに州を跨ぐ走行を計画したときは、途中にテスラスーパーチャージャーステーション(480VDC)が一か所しかなく、そこからは運に頼るしかありませんでした。
テスラ専用ではないその他のレベル3の充電ステーションは通過する小さい町にもありますが、こういったステーションの場合は金額、時間、または本当に充電できるかどうかについても計画の段階では分かりません(写真2)。他にもタイヤ圧、天候、景観、速度制限なども不確定要素のため、ソーシャルメディアのテスラオーナーグループに頼るしかありません。
この件に関連する私の体験を以下にご紹介します。
写真2:充電ステーションの多くはCHAdeMOノズルを使用していますが、テスラのドライバーの皆さんは、ノズルのアダプターが充電ステーションにあるかどうかを必ず確認してください(写真:Kevin McGovern/Shutterstock.com)
テスラと旅行
意外にも大きな問題はありませんでしたが、走行距離不安症になることは何度かありました。出発前夜から自宅で充電し、翌日には64km(40マイル)離れた郊外のテスラスーパーチャージャーステーションで満タンにしました。ここでフルチャージしたことで、旅路の半分以上、うまくいけば最後までもつかと思いましたが、テスラのメーターは、「無事に到着するにはもう一度充電が必要」と伝えてきました。そこで小さな町の充電ステーションに寄りました。そこはタクシー会社がEVを保有しており、そこの充電器を一般車も利用できるようにしてくれていたのです。ここでトラブルが発生しました。私たちはCHAdeMO(正式名は「CHArge de MOve」(充電で動く))充電アダプターが必要だとは思っていなかったのです。テスラの充電アダプターセットは持っていましたが、いずれもCHAdeMOノズルには適合しませんでした。完全なリサーチ不足でした。購入は可能だったのですが、ラッキーなことにここのオーナーがアダプターを貸し出してくれたので、必要なアプリをダウンロードして、目的地に行けるだけの充電をすることができました。今思えば、アダプタを借りられたことが非常に重大なことであり、これがなければ、レベル1のNEMA(NEMA規格の標準120VのACコンセント)で何時間も充電しなければならなかったのです。
帰路の充電には、宿泊したホテルに充電ステーションがあることをリサーチ済みでした。予定通り旅行の前半に使った充電ステーションと同じタイプでしたが、すぐに持参したアダプターが充電器ノズルに合わないことが分かりました。しかもこのステーションはセルフ型だったため、アダプターを貸し出してくれる親切なオーナーもいませんでした(走行距離不安症スタート)。インターネットで検索すると、セルフ型のウォールコネクターが近くの市営空港にあることが分かり、でこぼこした田舎道を急ぎ向かいました。しかしこの命綱である充電器は最大電力が40アンペアつまり1時間に40km(25マイル)分しか充電できないのです。とはいえ、これが最後のチャンスでした(走行距離不安症レベル最大)。結局私たちはここで2時間充電し、あのアダプターを貸し出してくれたタクシー会社の充電ステーションに戻れるだけのエネルギーを確保しました。メーター表示残り25km(16マイル)分の充電でなんとかあのタクシー会社にたどり着き、再びCHAdeMOアダプターを借りました。2時間で満タンにし、今度は前日に満タンにした郊外のスーパーチャージャーステーションに戻れるようになりました。最終的な費用は、レベル2充電器に21.32ドル、テスラ充電器に9.62ドルでした。往復853km(530マイル)の燃料費は合計30.94ドルということになります(自宅での充電分は含まれていません)。内燃エンジンの場合、この旅行に75リットル(20ガロン)のガソリンが必要です。これを考えると、燃料費の節約で走行距離不安症を相殺できると私たちは考えます。
まとめ
個人的な結論:適切なアダプターを備えていること。
テスラからはさまざまなコネクターを含むアダプターキットが提供されていますが、いずれもCHAdeMOアダプターには対応していません。
全体的な結論:ご存知の通りEVの充電インフラには盲点がいくつかあります。
しかし充電に関しては、この状況が長く続くとは思えません。すでにChargePointとNATSO(National Association of Truck Stop
Operators)が提携し、10憶ドルをかけてハイウェイや郊外にEV充電ステーションを整備すると発表しています。今回の旅行中、車道はまだまだ一般の自家用車やプロのトラック運転手のものという状況でした(彼らも大都市間では今後EVを運転するようになるでしょうが)。
今回の旅行はドキドキした経験となりましたが、無事に終わりほっとしています。きっと、探検家のルイスとクラークが探検を終えた時に感じた気持ちと同じでしょう。
著者
Tommy Cummings
テキサス州マンスフィールドにあるMouser Electronics のシニア・テクニカル・コンテンツ・スペシャリスト。「The Dallas Morning News」、「Fort Worth Star-Telegram」、「San Francisco Chronicle」などでジャーナリストとして活躍後、2018年にMouserに入社。シリコンバレーのドットコムバブルを取材し、複数の報道機関でデジタルコンテンツやオーディエンスエンゲージメントの編集者を務める。ハイズマン賞(アメリカの大学フットボール最高栄誉)の審査員を務めた経験もある。ツイッターまたはLinkedInにてフォロー可能。
ツイッターのアカウント:@tommycummings
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