従来型マシンビジョンとLiDARの組み合わせがアプリケーションとシステムに新しい光を当てる
(写真:Feng Yu/Shutterstock.com)
私たち人間には、目や耳などの非常に優れた生物学的センサと一緒に、脳という素晴らしいプロセッサーが与えられています。マシンビジョンシステムの開発では、可視光領域で動作するイメージセンサに、オブジェクトの検出や識別ができる人工知能(AI)と機械学習(ML)の技術を連動させることで人間の能力を再現させる試みから開始しました。さらに両眼視や奥行き視覚を実現させるデュアルセンサの採用で、さらなる機能の向上に可能性を見出しています。
従来型マシンビジョンシステムは基本的には今でも十分優れているのですが、人間の目と同様に、可視光領域が制限されたり、照明が暗い場所または雨、雪、霧などの悪天候では性能が落ちたりする問題があります。
こういった問題をマシンビジョンシステムで克服できるのでは?
ここからは、これまでのイメージングシステムに伴う課題に加え、人体の追跡や容積測定、ロボット工学を含む新しいイメージングアプリケーションのソリューションについても探っていきます。
従来型イメージングシステムの問題点
従来の熱センサでは、複数の移動するオブジェクトが交差したり縦に並んだりする場合、その距離の判断や追跡においては効果を発揮できないという問題点があります。この問題点を克服する策として、「光による検知と測距」、または「レーザー画像検出と測距」とも訳されるLiDAR(ライダー)センサを1台以上搭載して従来型の熱センサを改善するという方法があります。
従来型イメージングシステムは、可視光や赤外線など、外部から来た電磁エネルギーが何であっても検出するパッシブ型です。これに対してLiDARは、高速点火レーザーを使用して発光するため、アクティブ型のリモート検出システムに分類されます。LiDARシステムは、放射光が対象のオブジェクトの前まで行き、戻ってくるまでの時間を測定します。この時間を使って走行距離を計算します。
標準型イメージングシステムが2次元配列のピクセル値(画素)を作成するのとほとんど同じ方法で、LiDARイメージングシステムは、3次元配列のボクセル(体積要素)を作成します。LiDARレーザービームは帯域幅が狭く、オブジェクトの物理的特徴を超高解像度で検出及びマッピングすることができます。実際にLiDARは、高解像度・高精度の深度データが必要なアプリケーションにおいて、標準型のステレオ深度カメラよりも大幅に優れた性能を発揮しています。
対象となるアプリケーションによりますが、設計者は、以下を含むセンサを組み合わせ、それらとAI及びMLを連動させることができます。
- オブジェクトを検出・識別する従来型画像センサ
- 観測できる可視光領域を拡大する熱画像センサ
- 高精度な測定、動作、及び追跡機能を備えたLiDARセンサ
例えば考えられる適用例として、新型コロナウィルスを取り上げてみましょう。新型コロナウィルスに感染した人の症状の一つが体温の上昇です。そこで熱センサとLiDARセンサを従来型マシンビジョンシステムに搭載すれば、空港のラウンジなどにおいて感染している疑いのある人を見つけることができます。
Intel® RealSense™ LiDARカメラL515
IntelのRealSense技術により、世界を3Dで理解することができる視覚ベースのソリューションが数多く開発されてきました。中でも最新のIntel® RealSense™ LiDARカメラL515(写真1)は世界最小のカメラで、直径61mm、奥行き26mm、さらに低消費電力・高解像度のLiDARであるため、毎秒数百万の深度ポイントを記録できるのが魅力です。
写真1:Intel® RealSense™ LiDARカメラL515の直径はテニスボールより小さい(写真:Intel提供)
L515は、屋内アプリケーション用に設計された革新的なソリッドステートLiDAR深度テクノロジーに基づいているため、高解像度・高精度の深度データが必要なアプリケーションには最適なカメラです。出力距離は、最短 0.25mから最長9mと幅広く、毎秒2300万以上の深度ポイント、及び1024 x 768ドット/30fpsの深度センサ解像度を実現しました。L515は、フルHD RGBビデオカメラセンサだけでなく、MEMS加速度計やMEMSジャイロスコープなどのセンサも内蔵しているため、従来型マシンビジョンとLiDARの両方が必要なアプリケーションにも対応します(写真2)。
写真2:Intel® RealSense™ LiDARカメラL515の分解図(写真:Intel提供)
L515のさらなる魅力は、内部ビジョンプロセッサであり、これにより動く被写体を撮影することで生じるぶれや歪みが低減されるため、ホストプロセッサの必要な動作を最小限に抑えることができます。軽量のL515は、消費電力が3.5ワット未満であり、市場に出回るカメラの中では世界で最も電力効率の高い高解像度LiDARカメラです。小型と低消費電力を兼ね備えたL515は、ハンディ製品や自立ロボットのアプリケーションには最適です。
設計にL515を取り入れたい場合は、Intelのオープンソース「RealSenseソフトウェア開発キット(SDK)2.0」があります。SDK 2.0はクロスプラットフォームにもオペレーティングシステムにも依存していないため、Windows、Linux、Androidだけでなく、Jetson TX2、Raspberry Pi 3、macOSにもインストールすることができます。
L515は、他の最新版のRealSenseテクノロジーファミリと同じSDKを使用するため、Intelの他の3Dカメラからの移行が簡単です。例えば、とりあえず開発をしてみて、現行または今後のIntel RealSenseデプスデバイスを搭載するということもできます。
これなら反対する人もいないのではないでしょうか?
可能性を探る
L515の可能性に興奮を覚えない設計者はいないでしょう。LiDARというと、当初は自律走行車など屋外のアプリケーション用でしたが、L515が人の追跡、容積測定、ロボット工学、3Dスキャンなど、あらゆる種類の可能性を引き出したのです。またLiDAR技術を熱画像技術と組み合わせることで、従来型イメージングシステムでは制限されていた課題をクリアすることができます。
設計者としてIntel® RealSense™ LiDARカメラL515を搭載するとしたら、どんなシステムが思い浮かびますか?
Clive "Max" Maxfield
フリーランスのテクニカルコンサルタント、ライター。1980年、イギリスのシェフィールド・ハラム大学において制御工学の理学士号を取得。その後メインフレームコンピューターのCPUデザイナーとして勤務。長年にわたり、シリコンチップやサーキットボード、さらには脳波の増幅器から「Steampunk Prognostication Engine(スチームパンク風予測マシン)」まで、幅広いデザインを手掛ける。また35年以上にわたり、EDA(電子設計自動化)の最前線にて活躍。
埋め込みシステム、電子、半導体、EDAの業界では有名人であり、北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ、インド、中国、韓国、台湾を含む世界各国の数々の技術
会議において論文を発表。アメリカで開催されるPCB WestやノルウェーのFPGA Forumでは基調講演を行う。またアメリカの複数の大学、イギリスのシェフィールド・ハラム大学、ノルウェーのオスロ大学からは客演講師として招かれた。2001年にはハワイの会議に出席し、前下院議長のニュート・ギングリッチ氏と共に話題となる。
数多くの書籍の著者または共著者でもあり、代表作には「Designus Maximus Unleashed (banned in Alabama)」(アラバマでは発禁)、「Bebop to the Boolean Boogie (An Unconventional Guide to Electronics)」、「EDA: Where Electronics Begins」、「FPGAs: Instant Access」、「How Computers Do Math」などがある。
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