2020年4月2日木曜日

Arduinoが創るヒューマンオーグメンテーション ~義肢装置を 誰でも手に届く価格で~










Arduino シングルボード・マイクロコントローラは、もともと2000年初頭に学生や電子工作を趣味とする人々向けに設計されたが、今や誰でも利用できるようになってきている。

特に、義手などの義肢装置(補綴)・ヒューマンオーグメンテーションの分野での活用が進み、標準の構成部品のひとつとなった。事実、Arduinoはあちこちでよく使用され、Microchip Technologyやその子会社Atmelなどマイクロコントローラの中でも有名なメーカーが自社製品にArduinoを中心とした、またはArduino互換のハードウェアを続々と増やしてきている。



Arduinoの特徴や使用する利点として
  • 使いやすく、洗練されたプログラミング言語(Arduino Cとも呼ばれる)
    プラグインと
    C++ライブラリで拡張でき、LinuxOSXWindowsを実行するコンピュータのUSBポートを介してデバイスのファームウェアをフラッシュするコマンドを含む

  • プラグインで拡張可能な統合開発環境(IDE


  • あらゆる分野のボランティアおよびプロエンジニアの大規模かつアクティブなコミュニティ
    様々な意見や修正の提案を受けられる


  • オープンソース ソフトウェア・ハードウェア
    Creative Commonsライセンスのもとリリースされている多くの設計と仕様から、開発と市販化までの時間を大幅に減らすことができる


これら利点に加え、広く利用されているArduino Mega 2560 Revision 3 マイクロコントローラボードなどのArduinoボードは安価に手に入る。このボードは、Microchipの Atmel ATmega2560 8-bit microcontroller (MCU) をベースとしており、複雑なプロジェクト向けとされている。54デジタル I/Oピン、16アナログ入力、拡張性ある大容量スペースを装備、3Dプリンタやロボットプロジェクトにおすすめだ。これでカスタムパーツを安価に作成できる。控えめに見積もっても、Arduinoを使ったデバイスの製造には、これまで標準としてきた別製品を使用した場合と比べて10分の1のコストで済むだろう。




例えば、初のオープンソースのロボットスーツ開発と言われるALICEプロジェクトは、1,000ドル以下で販売予定であるが、とある別企業が製作した類似の製品はおよそ80倍ほどの価格となる。この価格差を承服しても、収入が低い人や戦争で被害にあった発展途上国の人にとってはArduinoベースの補綴であれば手が届く。開発にかかる金銭的な壁が著しく低くなるというのがポイントだ。

また、Arduinoを搭載した補綴やデバイスは、あらゆるレベルの経験と専門技術から作られていることがわかる。シンプルなものでいえば、個人のウェブサイトでペンなど筆記具を持つための補綴器具や熱タッチセンサーが紹介されていたり、学生が手ごろな価格でロボットスーツを作成できるキットを制作するための基金を募る Kickstarterプロジェクトというものもある。

同様に、Arduinoの公式サイトでは、ウィンドシールドのワイパーモーターを使用しArduinoボードで制御を行って、制作コストはおよそ100ドルといったアームサポートを紹介している。その他、類似のプロジェクトとして、Instructables.com でインストラクターがレッスンプランやクラスプロジェクトを紹介、さらに、Hackaday.ioは電子工作向けのサイトだ。どれも、Arduinoの有用性が証明される10年前には想像もできなかっただろう。


商用レベルでは、切断された手足向けの補綴やスーツの開発以外にも、より高度なArduino搭載デバイスが目覚ましい発展を遂げている。サイエンス・フィクションとテクノロジのイベント・Penguincon 2015にて、ゲストのアルバート・マネロは、センサーを利用して体内の他の筋肉の信号と送受信を行うミョーエレクトリックシステムのオープンソース化を発表した。Arduino 補綴としては、ヘッドセットやヘッドバンドを装着して受信した脳波(EEG)を受け補綴と通信できるブレイン・コントロール・インターフェイス(BCI)、さらに、MIT メディアラボのガーション・ダブロン & ジョセフ A パラディソは、舌に網目状の電極を取り付け、視覚障害者向けに空間的かつ指向性データを提供するTongueduinoを5年以上かけて開発している。


あらゆる種類のArduinoベースの補綴とヒューマンオーグメンテーション開発がe-Nableを中心に行われている。e-Nableは、創始者イバン・オウエンが可動式義手・義指を開発し、その製造工程をオンラインビデオで紹介した2011年に立ち上がった。このビデオには、類似のデバイスを作ってほしいと多くの障害者から反響を得た。そこから、e-NableはGoogleグループへと発展、ついにはプロジェクトへと成長し、今日、e-Nableには7,000人のメンバーがおり、2,000ものデバイスを共同開発している。その多くは、Arduinoをベースに作成されている。


通常のフォーラムと同じく、同サイトには各種プロジェクトに関する回路図やブログ、記事、リソース一覧、世界中の団体向けの資金集めプロジェクトについて掲載している。e-Nable自身の紹介ページ 「About」では、電子工作愛好家、開発者、アーティスト、デザイナ、人道主義者、教師、親、子供、エンジニア、プロのセラピスト、医療従事者、慈善家、発明者、その他一般人がメンバーとして紹介されている。Arduino を軸に、オープンソース技術がいかに多様化しているか見て取ることができる。

まとめ


ヒューマンオーグメンテーション向けにArduinoを活用した義肢装置(補綴)の開発が成果を見せ始めている。今もなお医療分野での認証には大抵時間がかかるものだが、待たずして使用されてきているのが現状だ。まぎれもなく、これら分野の試みは失敗に終わるものもあるだろうが、オープンソースであるがゆえ、その努力は無駄にはならない。その中でも何かしら利用価値があると見いだされ他に使用される。今後何が起ころうと、Arduinoはすでに根強くこれら分野に影響を及ぼし、何年にも渡って活用されていくであろう。



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著者

ブルース・バイフィールド
無償のオープンソースソフトウェア関連に特化したフリーのジャーナリストであり、『Designing with LibreOffice』 の著者である。ブルースはLinux.comおよびMaximum Linuxの寄稿編集者であり、Datamation、Linux Journal、LinuxPlanet、The Linux Developer Network、Slashdot、LWNなど有名な雑誌に多く記事を掲載している。  

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