充電式バッテリは、今やあらゆる分野で重要とされている。
研究者からメーカー、エンドユーザー企業は、次世代テクノロジーの要件に合う、より安全で小さく、軽いバッテリの開発に余念がない。つまり、世間ではそんな高性能な小型・軽量電子デバイスが求められている。バッテリテクノロジの発展に従来の製造方法や、電気化学、材料だけではもはや期待できないためか、近年は電極内でのナノ材料の使用に関心が高まっている。
研究者からメーカー、エンドユーザー企業は、次世代テクノロジーの要件に合う、より安全で小さく、軽いバッテリの開発に余念がない。つまり、世間ではそんな高性能な小型・軽量電子デバイスが求められている。バッテリテクノロジの発展に従来の製造方法や、電気化学、材料だけではもはや期待できないためか、近年は電極内でのナノ材料の使用に関心が高まっている。
2019年のノーベル化学賞を受賞したリチウムイオンバッテリを活用する現在のバッテリ技術に不満はないが変化は避けられない。刻々と進化する電子業界が、この数十年の技術進歩をもたらしたといえるのだ。
近年、リチウムイオン電池は普及したが、その効率性についてはさほど印象に残らなくなってきた。他のバッテリよりはるかに安全でありながらもエネルギー密度が高いため、改善の余地がある。この既に確立したリチウムイオンバッテリにナノ材料を融合させることで改善を図ろうと、とあるタイプのバッテリが汎用・商用の両方で注目され始めている。
なぜナノ材料か
なぜ、かさばるバルク材からナノ材料に移り始めたのか。他業界でもナノ材料への切り替えが起こっており、その理由はほぼ一致する。小さなナノ材料をデバイスに組み込むことで実現する事柄が多い。
ナノ材料でももともと断熱効果を持つものもあるため、ナノ材料すべてがバッテリに適しているわけではない。とはいえ、固体のものや2D材などの非常に薄型のものといった、バッテリシステムに使用されている導電性のナノ材料もある。幸い、電極でナノ材料を使用するのは全く初めてのことでもない。技術内部の仕組みを変えずシステムをより効果的にしようとするうえでナノ材料を活用するのは当然の流れなのだろう。
ナノ材料を入れることで、様々な構造を介した電極へのイオンの移動において、特定のメカニズムがわずかに変化するが(サイズ・形状が異なる原子サイズの穴が作用し)、バッテリの通常の動作メカニズムは変化しない。つまり、新しいタイプのバッテリを一から開発するよりずっと簡単に、発生しうる安全や効率性に関する懸念事項を特定できる。完全に目新しいものを創ろうとするより、既存のものを改善した方が良いケースにあたる。
試されたナノ材料の多くは、電気伝導性が高いため、電荷キャリアの移動性も高い。これは、バルク材と比べて活性面積が広く、つまり表面積が非常に大きなナノ材料の特徴だ。活性面積はナノ材料全体(2D材)を表す場合もある。ナノ材料がそもそも薄ければ、無機材料であっても、バルク材よりずっと柔らかい。よって、フレキシブルかつウェアラブルの技術に使用されるバッテリとしてはより適当といえる(図1)。
図1このグラフェンシートのように、ナノ材料はもともと薄く、バルク材より柔らかいため、フレキシブル・ウェアラブル技術で使用されるバッテリにより適当である。
小さくとも、ナノ材料の多くはとても安定しており、高温・刺激の強い化学物質、物理的な高応力に耐性がある。これはすべてのナノ材料には当てはまらないが、バッテリ電極に十分な安全性と伝導性を備えているといえる。ナノ材料の悪い点を挙げるなら、複雑な製造方法をとらないといけないことからコストが高い。ただし、同じまたはより質の高い効果を求めるには、バルク材より少量で済むため、想像よりよりずっとコストを抑えられる。ナノ材料を少量ずつ使うことで無駄な生産も防げ、バッテリはバルク材を使用するより軽量化できる。
業界を牽引するグラフェン
数あるナノ材料の中から、グラフェンはその他のどのナノ材料よりも試作に使用される一歩抜き出た存在だ。多くの企業が様々な用途にグラフェンバッテリを製造販売している。とある大手携帯電話メーカーは新機種にこのグラフェンバッテリを搭載しようとした動きもあったようだ(グラフェンはすでに電話の冷却システムで使用されている)。
グラフェンは、ナノ材料が持つほぼすべての特徴のうちでも最高点を記録する。つまり、異なる材料それぞれの利点をとろうと妥協を図らずとも、時にグラフェンを使うことで解決する。さらに、多くのバッテリですでに積み重なったグラフェンレイヤを形成するグラファイトが採用されており、そのまま当然のことながらグラファイト(グラフェン電極)で開発が行われてきた。
グラフェンは材料全体の中でも、最も電気伝導性および電荷キャリアの移動性が高いものに入る。さらに、その他ナノ材料やバルク材料の中でも伸張強度と柔軟性が著しく高く、高温で荒い化学物質に対しても安定した動作をする。あらゆる点で最も優れているナノ材料は、パフォーマンスへ影響を受けずに多くの環境に対応できるといえる。バッテリや組込み先デバイスの内部が非常に高温になる場合には重要となり、晒される外的温度にも影響しない。光学的に透過性のある単層グラフェンなどは、ユーザーに隠しておきたい新型バッテリの透過電極・透過導電性フィルムに今後採用されるかもしれない。
グラフェンはその他のナノ材料よりもバッテリに適した特性があるほか、今後起こりうる大きな需要への対処へ大いに期待できる。グラフェンの特性や可能性について広く認識されているため、世界中で拡張が進められており、グラフェンは今や多くの形へと生産されている。原材料という点では、その他のナノ材料よりもっとスケーラブルで、より重要な商用オプションになってきている。
まとめ
今日、携帯電話またはリモート監視デバイスに限らず、より効率の良い小型のバッテリがますます求められている。多くの企業がナノ材料をバッテリシステムに採用し始めている。ナノ材料はパフォーマンス上の利点からバッテリのスマート化を促進するうえ、ほんの少量で済むため大幅なコスト増も起きない。多くの企業がグラフェンバッテリを製造し、すでに工業分野で利用されている。電話やタブレットなどのハイテク市場で大規模にグラフェンやその他ナノ材料が採用されるまでには念入りなテストが必要で、これら市場で実を結ぶにはいくらか時間がかかるであろう。
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著者
リアム・クリストレー(Liam Critchley)
化学・ナノテクノロジーを専門とする作家・ジャーナリスト・コミュニケータ
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