V2X通信のセキュリティとプライバシー
LTEベースのV2X通信は、大容量、広いセルカバレッジ範囲、広範囲にわたって展開されたインフラを利用して、安全および非安全アプリケーション向けのさまざまな車両通信サービスをサポートします。3GPPやクアルコム社などの技術企業・団体は、5GベースのV2Xサービスに向けたロードマップをすでに策定しています。
3GPPで規定されているセキュリティには、主に機密性、整合性、真正性、レプレイ攻撃に対する耐性などがあります。
車群による自動隊列走行の安全なモビリティ管理、信頼性の高い協調走行、効率的でプライバシーが保護された車両ビッグデータの共有と処理など、新たなプライバシーとセキュリティーの課題には、5G車両ネットワークの検討がさらに求められています。
サイバー攻撃に対する自動車のセキュリティと安全性を保証するためのソリューションには、二重鍵暗号システムを全面的に採用することが推奨されています。
V2Xアプリケーションは、継続的で詳細な位置情報に依存しているため、プライバシー問題につながる可能性があります。個人所有の車両では、位置情報の追跡により、その車両の所有者であるか否かに関わらず、ドライバーの動きや行動が明らかになります。つまり、V2Xユーザーの位置情報を送信・発信することは、車両の所有者やドライバーにとってプライバシーの問題となる可能性があるのです。
その他のV2Xアプリケーションには、車両間通信があり、右折や左折の支援、緊急ブレーキの警告、交差点での高度な状況認識などの既存の方法を強化します。また、携帯電話向けGPSアプリケーションWazeのコンセプトを拡張することで、交通渋滞に向けて速度調整を行ったり、GPS地図に車線閉鎖や道路工事などの状況をリアルタイムで更新することができます。地図の更新から、バグ修正、セキュリティの更新まで、今日の自動車に搭載されたさまざまなソフトウェア駆動システムの無線(OTA)ソフトウェア更新をサポートするためには、何らかの形のV2Xが不可欠になります。
V2X安全メッセージには、米国規格のBSM(基本安全メッセージ)、 欧州規格の CAM(協調認識メッセージ)やDENM(分散型環境通報メッセージ)などがあります。
BSMは、位置、速度、加速度 などの情報を含み、1秒間に最大10回送信されます。また、このメッセージシステムにより、車両受信ユニットは衝突を予測し、ドライバーに警告することもできます。
V2Xメッセージの保護とセキュリティ
V2XおよびV2I通信には、セキュリティやプライバシー問題の原因になる、誤解を招く使用や不正利用からメッセージを保護するために、強力なセキュリティが必要です。もう1つのセキュリティ対策として、公開鍵証明書を使用した署名付きメッセージがあり、これは、権限のない相手からのデータ交換の妨害を防ぎ、通信を安全に仮名化するために使用されます。
公開鍵暗号基盤(PKI)は、デジタルセキュリティ証明書の作成、管理、使用、保存、取り消しに必要なポリシーや手順で構成されています。PKIによって電子情報を安全に送信することができ、認証にはパスワードだけでなく、より厳密なID確認が必要になります。
V2X通信のセキュリティとプライバシー
インテント(意図)と軌道を共有することは、高度な経路計画の予測可能性と交通効率を高め、自動運転を強化します。
5G New Radio(NR)は、以下によってインテント共有を可能にします。
- 高スループット:5Gは、1kmの距離で100Mbpsを超える高データレートを実現します。
- 高信頼性:5Gは、軌道情報の正確かつ迅速な共有を保証します。
- 低遅延:5Gの低遅延性能により、軌道情報が数ミリ秒以内に共有できます。
混雑した高速道路のC-V2X性能
5G自動車協会(5GAA: 5G Automotive Association)は、 「V2X機能・性能テストレポート」と題したレポートでV2Xの性能と機能のテストを実施しています。このレポートで、C-V2X技術は、実験環境にて非常に混雑した道路のシナリオでテストされました。この混雑したシナリオでもC-V2Xの遅延は、そのシナリオ用に設定された 100msという遅延バジェットを超えることがなく、極めて良好な結果を得ました。
一連のラボテストとフィールドテストでは、以下のことが確認されています。
- 20MHz CH183での C-V2X 通信は、10MHz CH184での同一のBSMのようなメッセージ送信と同等の信頼性性能(パケット受信率対距離)を持つ。
- CH183のC-V2X高負荷伝送がCH172のDSRC基本安全伝送に与える影響は、LoS(見通し内)条件で1.4kmの範囲までは微小で無視できる。
- CH183のC-V2X高負荷伝送がCH178のV2IおよびI2V伝送に与える影響は、LoS条件で1.4kmの範囲までは微小で無視できる。
- CH183のC-V2X高負荷伝送がCH180のV2IおよびI2V伝送に与える影響は、LoS条件で最大1kmまでは微小で無視できる。
フォード社とクアルコム社は、 5GAAが米連邦通信委員会(FCC) に対して行ったC-V2X導入に関する申請をサポートするために、追加のフィールドテストを実施しました。フォード社が行ったテストでは、特にLoS条件で、C-V2X は非常に優れた性能を示しました。
5GAAのウェブサイトによると、C-V2Xは市販チップセットにて導入の準備ができており、2020/2021年には世界的に車載展開も開始できるとしています。5GAAは、今後も関連する各標準化機関と連携して、5G V2Xの要件を推進し、V2Xエコシステムの構築に取り組んでゆくことになるでしょう。
まとめ
米連邦通信委員会(FCC)による5.9GHz 帯の再編により、米国の車載通信の協調型高度道路交通システム(C-ITS)市場は、大きく変わりました。
自動車業界は、広く普及している専用狭域通信(DSRC)から、C-V2Xテクノロジーによる 狭い周波数帯での通信へと移行しなければなりません。今回発表された変更は、競合するテクノロジーによる不確実性をなくして、進歩への道を切り拓きます。
今後数年間で完全自動運転車の実用化を目指すなかで、V2Xと5Gは、今や自動車メーカーとって不可欠なテクノロジーになりつつあります。2021年に中国でC-V2Xを搭載した車両を発売した後、フォード社は2022年から米国で販売されるすべての車両にこの技術を搭載するとしています。5GAAは、今後も関連する各標準化機関と連携して、5G V2Xの要件を推進し、V2Xエコシステムの構築に取り組んでゆきます。
金融情報サービス会社IHS Markit社は、2021年1月に2021年の5G、C-V2X、自動車コネクティビティに関する分析結果を自社ウェブサイトに掲載しています。
Market Watchに掲載されたC-V2X調査に関するニュースリリースは、次のように伝えています。
「V2I通信市場は、スマート交通インフラの導入の増加により、予測期間中に12%以上のCAGRで成長する見込みである。スマート交通インフラには、車両と通信することで交通・道路状況情報の提供を可能にする、スマート交通信号やスマート監視カメラなどがある。」
これからも自動車はますます進化を遂げ、運転をより一層安全で快適なものにしていくことでしょう。
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