2020年5月26日火曜日

センサとアクチュエータで叶えるスマート天井。利便性が格段にアップ



近代建物の天井を見たことがありますか?
相互に接続されている機器がすべて天井から吊るされているのがわかりますか?

スマートビルディングの多くは、いくつものセンサとアクチュエータを備え、これらが複数の並列ネットワークで相互接続されています。一般的には以下のような機器を含みます。



  • セキュリティカメラ(アナログまたはデジタルの同軸ケーブルネットワーク)
  • 環境センサ及び火災/煙/熱探知機(独立したネットワーク、一般的にはツイストペア線)
  •  照明器具(一般的にメインの照明には標準のブレーカーパネル回路、非常用照明には別の無停電電源装置(UPS))
  • Wi-Fiアクセスポイント(CAT5/7イーサネットまたはパワー・オーバー・イーサネット(PoE)をインターネットルーターに接続)
  • PAスピーカー(アナログオーディオ配線)
  • 暖房、換気、空調を管理するアクチュエータ
  • 出口標識、スプリンクラー、アラーム/ストロボボックスなど、非常制御装置


より高機能なビルになると、さらに多くの天井取り付け式センサとアクチュエータがあります。そしてこれらすべてを、占有センサ、電子看板、室内空気モニター、区画ごとの空気混合機、個別に制御する照明器具、及び避難支援機器などを含むコンピューターネットワークと相互接続させなければなりません。



上記機器を従来の方法で天井に配線するには、機器ごとのネットワークを設置し、それらをたくさんのセンサやアクチュエータと相互接続する際に発生する複雑性、時間、及び費用といった大きな懸念事項が伴います。これは、パーティションで区切ったオフィス、または仕切りのないオープンオフィスのどちらが流行るかについての間接的な理由となります。オフィスの壁が天井まで続いている場合、安全規定に従い、仕切られたスペースそれぞれに天井取り付け式安全装置及び照明器具、また6つ以上のネットワーク接続が必要になります。そのため、ある程度の数のデスクが同じ天井を共有する、またはパーティションを低くして、それを変えないようにする方が、高い壁に必要なすべてのネットワークを設置してそれらを頻繁に変更するよりもはるかに費用は低くなります。必要なのは、センサ及びアクチュエータの全機能を、設置及び修正が簡単な1つの共通ネットワークに統合することです(1)。



図1:天吊り型プロジェクタのような機器をスマート天井に設置する場合は、通常のビルのメンテナンススタッフに対応していただけます。(写真:Eakrin Rasadonyindee/Shutterstock.com


スマート天井で解決

 ここでスマート天井の出番です。一般的には、PoEを使用することで、天井に取り付けられているすべての機器に電力を供給し、ツイストペアネットワークを介してこれらと通信ができます。PoEのメインスイッチは、設置スペースの横にある配線室に設置されることが多く、CAT7ケーブルは天井のそれぞれの機器に引き入れられます。これらのケーブルは安価のため、将来的な使用に備えて予備ケーブルを巻いて残しておくことができます。メインスイッチはビルのインターネットサービスに接続され、期待通りのトラフィック実現に十分な回線容量を提供、センサ及びアクチュエータをインターネットに接続します。さらに、ビルの配電システムにつながっており、すべての天井機器が作動するに十分な電力を供給します。UPSは、ビルの安全性または業務にとって重要なデバイスに対し、バッテリーやジェネレーターから電力供給できるサイズにすることができます。またメインスイッチは、ローカルエッジコンピューティングプロセッサの搭載も可能なため、クラウドと大量のデータの送受信をせずに、スマート天井のシステムに関する現場での分析や制御を実施できます。

 
上記のようなスマート天井の場合は、機器の追加も再設定も簡単です。天井のタイルを押し上げ、イーサネットケーブルを見つけたら、機器を取り付け、そのケーブルにつなぐだけです。低電圧のIoT機器をPoEネットワークで使用する場合、電気技師に頼む必要はないほどで、通常のビルのメンテナンススタッフにお願いできます。機器と言っても、シンプルな温度センサからLEDのスマート照明器具(60W出力可能なPoEに使用できる最大400ワットの白熱灯と同じ明るさ)や電子看板まで幅があります。それでもPoEスイッチは、新しい機器を自動で検知し、そのデータと給電を設定し、さらにその機器の機能をフル活用するためのエッジプロセッサにアプリケーションを読み込ませます。


さらにスマート天井の多用途性、効率性、利便性の向上についてもお話ししましょう。レール式可動照明のレールのような器具は、その長さに沿ってどこにでもPoE機器を取り付けることができます。相当数のレールを吊り天井のレールに統合させても、必要なネットワーク配線を施せば、IoT機器は2’ x 2’グリッドのどこにでも吊るすことができます。照明器具や換気扇、広範囲のWi-Fi、電子看板などが職場に必要であれば、梯子を持ってきて、レール式可動照明にあるような留め具を使って追加したい機器をレールにカチッと留めるだけです。1秒も経たないうちにネットワークが検知して設定を行い、新しい機器が使えるようになります。このタイプのシステムについては、私が保有する米国特許番号10030398において説明しています。




さらに掘り下げると、ロボット技術を使えば、天井取り付け式機器を自動で設置及び移動することが可能です。相互接続にレール式可動照明のようなタイプを使う代わりに、IoT機器を設置するために天井を移動する小型電動シャトルカーをレールで使用するのです。ビルの使用者またはビルの自動システムがシャトルカーに指令を送ります。天井に並列に広がるレールの間に複数のスイッチを取り付けることで、シャトルカーは新しい場所に向かったり、迂回したりすることができます。デバイス格納システムでは、要求があればすぐに天井を移動できる予備の機器一覧が管理されています。このシステムは滑り接触とレールに統合された母線を利用して各IoT機器(及びロボットシャトルカー)に電力を供給します。機器とシャトルカーに対するデータ接続は、レール内に光ビームを利用するか、または無線ネットワーク上で行うこともできます。このシステムの詳細については、私が保有する米国特許番号10148355において説明しています。

まとめ

スマートビルディングにはスマート天井が必要です。天井取り付け式機器の設定及び再設定は、費用が高く非効率になりがちですが、統合されたIoTネットワークやローカルエッジコンピューティングを使ったスマート天井にすることで、状況を大幅に改善することができます。最先端のスマート天井は、再設定可能なレールとロボット技術を利用し、動的かつカスタマイズ可能な環境を実現します。


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著者


チャールズ C. バイヤーズ:Industrial Internet Consortiumのアソシエイト・チーフ・テクノロジーオフィサーであり、現在はOpenFog Consortiumと合併している。エッジ/フォグコンピューティングシステム、共通プラットフォーム、メディア処理システム、及びIoTの構成及び実装に従事する。以前はCiscoの主席エンジニア及びプラットフォーム・アーキテクト、及びAlcatel-Lucentのベル研究所のフェローをしていた。通信ネットワーキング業界に30年間身を置き、音声スイッチ、広帯域アクセス、集中型ネットワーク、VoIP、マルチメディア、動画、モジュラープラットフォーム、エッジ/フォグコンピューティング、IoTなどの分野において多大な功績を残している。またIndustrial Internet ConsortiumやOpenFog ConsortiumのCTOなど、複数の標準化団体においてリーダーを務め、PICMGのAdvancedTCA、AdvancedMC、及びMicroTCA小委員会の創設メンバーでもある。

ウィスコンシン大学マディソン校において電気及びコンピューターエンジニアリングの理学士号、及び電気工学の理学修士号を取得。趣味は旅行、料理、サイクリング、自身のワークショップで研究すること。80以上の米国特許を保有している。



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